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2011年1月28日金曜日

2011/01/27 1868号JCJふらっしゅに掲載

 

◇◇ オバマの一般教書演説と米メディア ◇◇

                         竹内 マヤ

 私もとうとう風邪にやられて、夕べは微熱でぼうっとしながら、一般教書演説とその後の評論番組の類を観ていた。
 政権は支出凍結と法人税切下げを掲げて、本格的な方向転換を示した形。超党派の協調を醸すために、当り障りなくまとめる努力の跡が目立つ演説だった。

 今朝の「Democracy Now」で、Rocky Randolph(元ソルトレーク市長)や、進歩的活動家として知られるハリー・ベラフォンテがコメントしたように、オバマを大統領に押し上げた民衆の意思と力を捕えられず無駄にした動きが変わらない限り、オバマ政権は落胆しか生まないということだろう。

 ベラフォンテは大統領選中にオバマと会見する機会があったが、”Can you cut me some slack”(大目にみてもらえないか)と言われ、咄嗟に「これまで大目にみていなかったとでも?」と答えたと、フラストレーションを語る。大統領であれ誰であれ、いかなるリーダーを選出できたにせよ、国民がその意思を主張し続ける事がいかに大切であるか、私たちはいま思い知らされているわけである。

 国内経済の視点も、レーガンと同様のおこぼれ経済依存に陥落。GE会長のイメルトに関して、私は、彼のビジネスリーダー会議でのディスカッションをここ数年通訳している関係で、オバマのスピーチのなかに聞き覚えのある内容があり、彼をアドバイザーに採用した事がそのまま政策に反映されたかに感じた。因みに、イメルトは生涯共和党支持と自認しなからも、ブッシュ政権当時は、もし政府が企業だったとしたら、共和党議員の多くは即座に解雇されて当然な程無能だと漏らしていた。が、所詮大企業幹部。国民の利益ではなく、企業の利益を優先する義務を負っていると、当時も明言していた。GEに限らずIBMにしても同様に、米大企業はその辺の小さな国
家の経済に比べれば、それを上回る規模を誇っている。その目指す方向性に一歩遅れてオバマ政権も追随する形なのだと感じる。

 演説後の共和党の反論も、俄かスポークスマン・Paul Ryanも、ティーパーティーのおバカ代表・Michele Bachmannのコメントもあまりにお粗末。また、MSNBCのRachel Maddowは、共和党はBechmanには喋らせる意思は無かったのに、CNNがあたかも公式コメントの如くわざわざ彼女のために時間を割いたのは、報道側の意図としてはどんなもんなの? とCNNを揶揄していた。とはいえ、メディア全体が枝葉末節にとらわて無力になってるということでは、当のMSNBCも前日、Bachmannの奴隷制度に関わる米国史の常軌を逸した誤認をひたすら強調して取上げたばかりなので、見ようによっては同じ穴の狢でしかないのかもしれない。

 あまりにお粗末な誤った理解や信条、プロパガンダに、ものの見事に呼応する米国民が少なからずいる。そのことが、まさに今のアメリカの問題なのだろう。生活環境、教育、報道、情報の不備から建国依頼代々引きずって来た怒りや無力感、それを自ら覆い隠そうとして外へと強調して打ち出される優越意識は、ほんのちょっとした事で凶暴な力となる。他者を徹底して悪魔化しようとする。その要因となる状況が揃っていて、危ない時期、それがいまなのかもしれない、と感じている。

 MSNBCと言えば、米主流メディアの中ではFOXの対局に位置しているが、そのアンカーマンの一人・Ed Schultzが、比較的一貫して主張の明確な発言をしており、1月10日号の「The Nation」誌で進歩派優秀者名簿のメンバーに選出され、kucinich議員との対談が取り上げられた。

                  (通訳、NY在住=ペンネーム)


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