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2011年11月28日月曜日

【緊急レポート】 有権者の54%が支持、世界に波及/「ウォール街を占拠せよ」

当ブログへの投稿が少々遅れましたが、「ジャーナリスト」紙に掲載された記事です。Daily JCJ からもご覧頂けます。

【緊急レポート】
有権者の54%が支持、世界に波及/「ウォール街を占拠せよ」
ニューヨークで9月に始まった「ウォール街を占拠せよ」。10月15日には、ニュージーランド、オーストラリア、日本、英国、 ドイツなど世界各地で一斉にデモが行われた。ニューヨークでは少なくとも5000人がデモ行進、ローマではその規模は数万人に膨れ上がった。 拠点ニューヨークから14日に届いた緊急レポートをお届けする。
*     *     *
「我々こそ99%」のスローガンを掲げて9月17日に立上り、同様の運動を全国約200都市に拡大する「ウォール街を占拠せよ」 運動。参加当事者達も今後の展望は明らかに出来ずにいる。
10月13日、ズコッティ公園に緊張が走った。この日、同公園を所有する企業が市警に訴え、 公園清掃の名目でデモ参加者の強制退去を予告した。
このニュースはこれに抗議する何千人ものさらなる支援者を引寄せ、 彼らは自らかき集めた箒やブラシを手に明け方にかけて急遽公園を清掃して見せた。翌朝、市当局は強制退去中止を発表。状況は一旦終息した。
この間、公式な交渉は行われていないという。この運動の柔軟な姿勢の一端と、今や世界が注視する中、 軽率には動けない当局の閉塞感が垣間見えた瞬間だった。タイム誌の調査によれば、54%の有権者がこの運動を支持し、「茶会運動」の27% と比べ幅広い共感を得ている。今後も運動の広がりと共に支持も拡大するだろう。
経済学者、リチャード・ウルフは語る。
「この運動の背景には30年に及ぶ米国経済の不公正拡大の道のりがある。過去30年にわたる生産性の飛躍的向上は企業に驚異的利益・ 株価上昇をもたらし、その一方で1978年以来実質賃金は変わらず、米国の一般労働者は二つの職に就くなど、 世界のどの先進国におけるより長時間働くことを余儀なくされて来た」
ILOによれば米国人は年間日本人との比較で137時間、フランス人との比較に至っては499時間も労働時間が長い。 にもかかわらず米国全世帯の6分の1が失職者を抱える。 70年代に40対1だった企業トップと一般労働者との賃金格差は400対1にまで拡大している。
一方、今回のウォール街に端を発した運動の中心を担うのは、平均年齢21歳ほどの学生達だ。彼らは重い学資ローンを抱え、 砂漠のように乾ききった雇用市場を目前にしている。
テーブルで案内をしていたウィスコンシンでスペイン文学を学ぶ大学生、マイケル・グリフィス(21歳)。 ウィスコンシンの運動を経て今ズコッティ公園で活動を続ける。何が彼を運動に向かわせるか訊ねると、 「目の前で起きている事が本質的に不当であると、DNAに書込まれている気がする。そして何より同年代の若者達と同様、 自分の将来への不安と恐れが自分を突き動かしている」と答えた。
彼のような非組織活動家が運動の中心を担う。
ノースキャロライナの小さな町から来たという国際関係論を学ぶジェーンは、コンクリートの地面に敷いた寝袋で休憩していた。 「何か歴史上重大な局面を生きていて動かずにはいられず4日間の予定で来た」と言う。 地元の小さな町でも学生達が小規模ながら運動に立上っていると話した。
オハイオから来た看護学生デイビッドは、 医療班を手伝いテントを中心に6畳ほどのスペースに積上げた医療資材の入ったプラスチック容器を整理しながら、運動への期待を静かに語った。
「変革は僕達が起すしかない。富裕層に課税し、企業による社会の支配を終わらせる。当面雇用の創出と国民皆保険を訴えて行きたい。 あと何週間、何カ月かかるかわからないが、僕達の存在が一時的なものでない事を実証し続ける」
彼ら若者達に混じって活動家、労組、有識者、大学教職員、宗教家などの支援も増している。社会派のアイスクリーム・ メーカーとして知られる「ベン&ジェリー」も、屋外キッチンの隣にスタンドを設けて参加者に自らアイスクリームを振舞い、 一般歩行者の関心も惹く。企業スポンサーの先駆けだ。
グリーン・パーティーの党員は、有志ジャーナリスト達によって新たに発刊された「Occupy Wall Street Journal」を道行く人に配布し、大学教授らしき男性は、テーマ毎の講義の予定を書いた広場の黒板の前で学生と議論していた。
公園のあちこちで様々な議論が交わされている。また、 ブロンクスの貧困地域住民に新たな形の社会医療を提供するモンテフィオーリ病院の医師、看護師が、医学生と共に無償で医療サービスと救急医療班の訓練を提供している。
地域住民も本を寄贈し公園に青空図書室が生まれた。最も組織されていない筈の運動が、 これまで目にしたどの運動よりオーガニックに一つのコミュニティーを形成している。
寡占化した大企業の抱える膨大な金が、その行き場を投機に求めた。それを奪い合う金融機関が新たなサブプライムの住宅・信販。 学生融資や、そのリスクをカバーする筈の保険としてクレジット・デフォルト・スワップなどのハイリスク商品を編みだした。
だが、その結果として訪れた金融危機では、納税者がその損失の尻拭いを強要され、税金が危機の原因たる民間企業に施された。 その影響は凄まじい勢いで公共プログラムの破壊へと及んできた。記録的高額賞与を貪るウォール街の企業幹部には、 今の所いっさいお咎めなしだ。
その一方で、それに対抗すべき活動組織は、長年分断されたまま、熾烈な労働に疲れ、とろ火で煮込まれたシジミのように無感覚・ 無力化した状態が目立ってきていた。いくら沸点寸前の社会状況となっても、大きな動きはつくれなかった。
リチャード・ウルフ氏によれば、「米国の政治は右傾化したのではなく、大多数の有権者が生活のストレスに疲れ、政治から離脱した」 状態にあったのだ。
「ウォール街を占拠せよ」が起こる前には、ウィスコンシン州で、教職員、警察官、消防士など公務員の給与・職・ 団体交渉権などの切り捨てに対して「市庁舎占拠」の動きがあり、ある程度の共感を得たものの、広がりは限定されていた。
牽引する若者達は、多くの大人達が麻痺させてきた正義感と健全な生存本能を発揮し得る時を、 旧来の組織や論理や方法論にしばられない自分たちのやり方を模索しながら、ひたすら待っていたのだろうか――。
前出のマイケルは、「僕達は社会の一部を代表するに過ぎない。より多くの声に耳を傾け、参加を求め、大きな視点で問題を見極めたい。 僕らだけではマニフェストは書けない」と語った。
1929年の大恐慌からニューディールを導き出して以来、米国で初めての新たな大規模市民運動はまだ始まったばかりだ。
(たけうち・まや/NY在住=ライター)
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2011年10月号より*
上記記事と写真は、2011年10月号PDF見本でもご覧いただけます。
8面 http://jcj-daily.sakura.ne.jp/20111008.pdf
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JCJ機関紙「ジャーナリスト」見本(2011年10月25日号)
8面 http://jcj-daily.sakura.ne.jp/20111008.pdf
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