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2012年11月17日土曜日

大統領選挙 - 長蛇の列を乗越えて

大統領選挙の当日、たまたまノースカロライナ州にいた。ノースカロライナ州はスイング・ステートと呼ばれる有権者の意見が共和・民主どちらにも転ぶ可能性のある九つの州の一つだ。

ここで地元の若いアフリカ系の女性と話す機会があった。投票所の前である判事が、有権者に対し候補者を指名して投票を促していたという。「違法なのでは」と訊ねると、投票所の入口から一定距離をおいていれば法に触れないらしいと言う。

更にこの女性が当日投票所に行くと、事前に有権者登録をしていたにも拘らず、有権者名簿から彼女を含む家族全員の名前が削除されていたという。こういう場合有権者は条件付き暫定投票をすることになる。今回の選挙では2011年から共和党が動き、投票時に運転免許証などの政府発行の写真付きIDの提示を要求するルールが複数州で強化された。NY大学法科大学院のブレナン司法研究センターによれば、米国有権者の約11%がこうした身分証明書を所有しておらず、その多くが貧困層、障害者、高齢者だという。しかも、導入側はこの新たなルールの周知はせず、マイノリティーの選挙権保護団体などが宣伝に奮闘することとなったが、十分に徹底は出来ず、暫定投票を強いられた有権者は相当な数となった。中には身分証明書は提示したものの、有権者名簿と身分証明書の氏名、住所の不一致などで暫定投票をやむなくされたり、また写真付きIDの提示が義務付けられていない州で提示を求められ、暫定投票に回されたなどの例も後を絶たない。

これら暫定投票は選挙日から一定日数内に有権者が各選挙区の選挙事務所に出向き、正規の身分証明書を提示するなどして、開票時までにその有効性を証明しなければならない。こうして暫定票の開票プロセスは、フロリダ州では四日間に及んだ。

共和党陣営の弱者を狙い撃ちした、なりふり構わぬ投票阻止への動きは他にも様々な形をとった。フロリダ州では民主党候補に有利とされる期日前投票の期間を共和党のフロリダ州知事が14日から8日に短縮、元々民主党勢力の優勢な選挙区の投票所数を削減、投票用紙には10項目に及ぶ税制などの複雑なフロリダ州憲法改正案を盛り込むなど、投票手続きの長時間化による有権者の投票意欲喪失を謀った。

それでも尚、人々は諦める事なく、最長7〜8時間も先の見えない列に並び、根気強く選挙権を全うした。フロリダ州で最後の一票が投じられたのは、ロムニー候補の敗北宣言後の午前1時半だったという。アリゾナ州では11月16日現在、まだ123,000票の暫定票を含む計135,140票の開票が終わっていない。

共和党が狙い撃ちしたマイノリティーと女性は、今回の選挙で明白にその意志を示し、男女間、白人・有色人種間の政治に対する意志の乖離と対立を鮮明にした。これはオバマ大統領の勝利というよりは、寧ろ政治がこれまで背を向けて来たこれら虐げられた人々の自尊と主体性の発露の勝利だと言える。彼らの目指すアメリカの今後のあるべき姿とは、一期目のオバマ大統領が実現した変革を遙かに越えるものである事は次第に明らかになっていくだろう。

二期目の今後四年間でオバマ大統領は、市民の意志と力に支えられ、彼ら市民の目指す人間として真っ当な社会へと移行して行く期待を一身に背負っているのだ。その期待にどこまで応えられるか、これからも市民は気を抜く事が出来ない四年間になりそうだ。

ロイター <Complaints about voter IDs, ballots, long lines in election>
http://mobile.reuters.com/article/idUSBRE8A609820121107?irpc=932

ABC 15.com <Arizona election results: 135,410 ballots still need to be counted in Arizona>
http://www.abc15.com/dpp/news/state/arizona-election-results-135410-ballots-still-need-to-be-counted-in-arizona

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